人間環境学をめぐる対話

〜対話の輪を広げる〜

 

【全体的なコンセプト】

前回までの人間環境学コロキウムは,人間環境学の学問領域のホットなトピックについて,毎回一人の新進気鋭の講師を迎えて講義を行うというものでした.それは,人間環境学という多くの人にとって未知の学問領域が持つ潜在性を垣間見るきっかけを与えてくれるという点で有意義なものだったと言えます.
しかしながら,人間環境学コロキウムをさらに発展させるという観点からすると,多くの課題が残されているようにも思えます.その一つは,人間環境とは何かという我々の学問領域全般の共通基盤が未だ十分に確立されてないにも拘わらず,それについて共通理解を持っているかのような感覚のもとに,人間環境学という言葉が一人歩きしているのではないかというものです.互いの学問領域が人間環境をどのように捉えているか知り,それを通して自らの認識を再吟味するという過程を経ることによって,人間環境学という学問領域を掲げることの意味がより一層高まるかもしれません.「コロキウム」という言葉には本来,インフォーマルな雰囲気の中で率直に思ったことをとことん話し合う集まりという意味があることから,この人間環境学コロキウムこそが,先ほど述べた再吟味のきっかけとなるような対話の場としてふさわしいと思われます.今回のコロキウムでは,このような異なる領域の人々に出会いの場を設定し,対話の輪を  広げるきっかけを人間環境学府のメンバーに提供することを第一の優先事項として企画しました.
さらに,このように「対話の輪を広げる」といった場合にも,いくつかの広がりの種類があると考えられます.一つは「横の広がり」であり,もう一つは「縦の広がり」です.前者の「横」とは,人間環境学の各領域間の対話の広がりの軸を指しています.そして,後者の「縦」とは,専門的な話題から日常の何気ない思いつきまでといった知識水準の広がりの軸を示しています.専門的な話題についていくのが難しい他領域からの参加者でも,率直に自分の言葉で質問したり,理解したりできるような,柔らかい雰囲気を持った対話の場を提供することが,異領域間の対話を進めるためには欠かせないと考えました.今回は,この2つの次元において対話の輪を広げるきっかけを提供するために,全3回のコロキウムを企画しました.

【具体プラン】


 以上のようなコンセプトを具体化するために,次のようなプランを立てています.まず第1回および第3回の企画は「横の広がり」を促すことを目的としています.第1回は,人間環境学の理論的基盤に関わるような話題展開を指向しています.第3回は家という具体的なモノを通して人間環境学の新たな可能性を探索するという位置づけです.第2回は「他の広がり」を促すことを目的としています.そのために,誰もが参加できそうな話題の選定し,カフェというリラックスした空間で会を開こうという主旨になっています.
 また,「縦の広がり」を促す方策として,全てのコロキウムに共通して次の2点を工夫しました:@パネリストの研究発表をモノローグ的に行うだけではなく,パネルディスカッションやフリーディスカッションの時間を必ず設ける,A各個人が自由に移動しながら,いろいろな人と話すことのできるティータイムを設ける.単に壇上の研究発表を聞くだけでなく,そこに積極的に参加したり,自由な雰囲気の中で率直な考えを交換しあったりできるようなプログラムを設けることによって初めて,新たな対話が生まれるきっかけを提供することが出来ると考えて,このような工夫を行いました.

【各個別企画の概要】

<第1回>

テーマ:人間と環境の関係 〜あなたの考える「開発」と「発展」とは〜

日  時:2002年10月26日(土) 14:30〜17:00

会  場:工学部建築学学科本館1F第三講義室(旧アトリエ)

パネリスト:

文化人類学 片岡樹(九州大学大学院)

環境社会学 帯谷博明(東北大学大学院)

環境心理学 呉宣児(九州大学大学院)

コンセプト:近年の環境問題を巡る議論の中には,人間が幸福を追求するための「開発」が本当に人間社会の「発展」に結びつくのかという,より根元的な問いが含まれている.開発と発展を巡る様々な問題は,人間と環境の関係性のあり方を問う人間環境学の中心的課題の一つである。この企画では文化人類学,環境社会学,環境心理学からの研究紹介をたたき台として,他分野の院生がそれぞれの立場から「開発」と「発展」の捉え方について議論し,人間環境に対する認識の違いを浮き彫りにしていく.この試みは,人間環境学全体の理論的基盤となる「人間環境哲学」とも言うべきメタ理論の構築に繋がるものであろう.

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<第2回>

テーマ:人間環境としての「道」のこれから

日  時:2002年11月13日(水)18:00〜

会  場:Culture Cafe(21世紀交流プラザ1F)

パネリスト:

臨床心理学 野島一彦 (九州大学大学院人間環境学研究院人間科学部門)

地域社会学 小川全夫 (九州大学大学院人間環境学研究院人間科学部門)

都市計画学 出口 敦 (九州大学大学院人間環境学研究院都市・建築学部門)

コンセプト:今日,道路開発・計画の見直しが大きな議論を呼んでいるが,この問題は採算性の問題だけではなく人間環境の問題でもある。今「道」のあり方が見直されることは,われわれのまちや生活にとってどのような意味をもっているのだろうか。本企画では,様々な専門性を備えた人間環境学府が「道」について一体どのような知見を提示しうるのかを,専門にとらわれない,ざっくばらんな議論を通して模索する.

 

<第3回>

テーマ:家族の風景 ─人間環境学から家族の問題について考える─

日  時:2002年12月14日(土)13:00〜15:00

会  場:文・教育・人環共同研究棟2F会議室

パネリスト:

建築計画学 竹下輝和(九州大学大学院人間環境学研究院都市・建築学部門)

建築計画学 益田信也(近畿大学九州工学部)

臨床心理学 鈴江毅(馬場病院,香川医科大学)

コンセプト:本企画では、家族というテーマに関し、建築学、社会学、臨床心理学の3領域から選ばれた大学院生が,研究紹介や家族に関する問題意識を出し合い、その後,それらについて教官を巻き込んでディスカッションを行う.今回は特に「家族環境と子ども」にスポットを当て,人間環境学が潜在的に持つ,複眼的な観点を通して初めて見えてくる人間環境への新たなアプローチを探る.