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大学院人間環境学研究院

Faculty information

教員情報
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野々村 淑子教授Toshiko Nonomura

専攻 教育システム専攻
部門 教育学
コース 修士: 現代教育実践システム 総合人間形成システム
博士: 教育学
講座 教育社会計画学講座
九州大学研究者
データベース
https://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K000592/index.html

研究内容

研究テーマ設定の背景

大学を卒業した後、私は一度就職し、一般企業で働いていました。そのなかで社会に求められている女性の役割が、家族にとっての母親の役割にどこか似通っていると感じ始めました。大学は女子大でしたが、子どもの頃から卒業するまで、女性だから…ということは殆どいわれなかったため、いざ社会に出てみて、男女で分けられている現実に衝撃を受けたのです。ただし、単に差をなくせばいいという単純な議論には賛同できず、卒業研究で行った歴史的方法で、この問題に問いかけてみようという思いから、大学院に進学しました。修士課程から博士課程にかけては、19世紀アメリカの近代家族の形成期における母親観念の言説分析をしました。しかしその後、その時期以前の子どもの養育、即ち子育てを中心とした家族や母親像成立以前の社会における子どもの養育の在り方、女性の位置をみなければ、近代以降の問題を解きほぐすことはできないと考えるようになります。現在は16~17世紀イギリスの孤児・棄児・貧困児の救済史に焦点をあてて研究を進めています。

 

研究手法

過去と現在の間の断絶・亀裂を見つけ、それが発生した時になにが起こったのか、どんな経緯で現在のかたちが形成されたのかという観点から歴史をさかのぼる手法で研究を進めています。自分たちの価値観から断罪したり評価したりするのではなく、史料からわかることを明らかにしていくのが歴史研究の特徴です。

 

調査対象や調査地についての解説

現在は、「16世紀ロンドン」が調査対象です。現地に足を運び、現地にしかない史料を収集します。さまざまな史料を見たり読んだりすることから、「16世紀ロンドン」に浸かることが理想です。

 

分析のためのソフトウェアやツール

基本的に史料・文献研究です。どの史料に問いかけるかが要です。複写できない古い史料は、慎重にカメラで撮影します。

 

研究についてのこだわり

歴史に問うこと、長期的視野による探究の意義を大切にしていきたいと思っています。

 

研究生活で最もわくわくしたこと、逆に最も落ち込んだこと

落ち込むことはほぼ毎日なので、落ち込まないように日々心がけています。ただ、「目からウロコ」な文献や出来事、そして史料に出会ったときは、やはりうれしいです。

 

研究生活で出会った印象的な人物やエピソード

毎年のように印象的な人物に出会ってきました。フーコーやラカーなど、目からウロコという文献との出会いはいくつかありますし、とても大切なものです。

 

大学院生へのメッセージ

阿部謹也『自分の中に歴史を読む』(筑摩書房、1988年)という本の中で、「自分が一生問い続けられること、それを知らなければ生きていけないと思えることを見つけなさい」という趣旨のことが書かれています。どんなにきつくても、「私はこれをやりにきたんだ」と少しでも思えるなら、きっと大丈夫だと思います。

 

大学院生の時何をしていたか

院生時代には、様々なゼミに出席し、自主ゼミにもいくつか参加していました。その中で、他の人の研究に触れる機会がたくさんあり、非常にためになりました。また、アルバイト(家庭教師)や奨学金は、研究者(の卵)にとって命である本を買ったり、研究会の後の飲み会(否、食事会…先生や先輩たちの話を聞けるのは本当に楽しみ)の資金にしたりしました。

 

学際連携についての思い

実は、人環の学際連携の取組に関わる以前から、全学教育のジェンダー関連科目の企画・運営において、多角的視野、多分野領域連携の重要性は実感していました。それぞれの分野の知見・手法を保持しつつ、同じテーマをさまざまな分野から考えていくことは、現実課題を解決していくためにも、それを初学者に伝えるためにも重要なことだと思います。

 

今後の研究・実践活動について

「自分の知っていることはわずかだ」ということは常につきつけられています。「ここがまだわからない、探究しなければならない」という思いをずっと持ち続けながら、これからもやっていきたいと考えています。これがこの仕事の醍醐味かもしれません。

 

おすすめの文献

○ミシェル・フーコー『性の歴史Ⅰ 知への意志』新潮社1986(1976)年

○トマス・ラカー『セックスの発明 性差の観念史と解剖学のアポリア』工作社1998(1990)年

○ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル フェミニズムとアイデンティティの攪乱』青土社1999(1990)年

○『阿部謹也 著作集』シリーズ 筑摩書房2000年

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