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大学院人間環境学研究院

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教員情報
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木島 孝之助教Takashi Kijima

専攻 空間システム専攻
部門 都市・建築学
コース 修士: 建築計画学
博士: 空間システム
講座 計画環境系講座
九州大学研究者
データベース
https://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K000597/index.html

研究テーマ

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研究内容

研究テーマ設定の背景

今日までの戦国・近世史像の大部は、文献史料と考古資料(主に陶磁器)に偏重して構築されています。そして、各地に膨大に残る城郭遺跡という史料は、殆ど全くといってよいほど無視または軽視されている状態です。しかしながら、全社会階層を過酷な軍役大系(それを援用した平時システム)の下に包摂・再編して行った当期社会の実像は、その象徴的産物である城郭の構造の理解を抜きに、本来、語り得ないはずです。そこで、城郭遺構から従来の歴史像を見直す必要があると考えます。すると、幾つもの通説が覆ることになります。

 

研究手法

山林に残る在地系城郭・織豊系城郭の遺構踏査の結果を「縄張り図」(新たな城郭研究に対応して考案された作図法)に図化し、曲輪配置や虎口・塁線の形状などの分析を行う。その相互比較から中央政権・大名権力・在地勢力など各階層が構築した城郭の共有点や差異を確認し、その意味を文献史料・考古資料等を勘案しつつ考察し、当期社会の構造を解明します。

 

調査対象や調査地についての解説

城跡踏査によって得た知見の一部をごく簡単に挙げます。

 

① 立花山・名島・高崎山・三城・栗野城など、朝鮮出兵時期の旧族大名衆の居城の構造からは、見切り発車で遂行された朝鮮出兵の軍役履行の歪みで、近世大名の権力タイプが大きく三類型に規定されて行った様子が看取できます。近世統一政権という言葉の印象と実在モデルの乖離が、城郭という当期社会秩序の頂に位置する産物から鮮明にうかがえます。

 

② 朝鮮出兵以前の肥前松浦郡領主波多氏の居城とされる岸嶽城を踏査したところ、江戸初頭期に織豊取立大名寺澤氏が織豊系縄張り技術で一新していることが判明しました。これに伴い、岸嶽城を標準遺跡とする唐津焼の創始時期が大きく変わります。唐津焼は国内高温焼成施釉陶磁器の出発点であり、本邦が世界の陶磁器大国にのし上がった歴史の原点であるだけに、以後の陶磁器編年、それを基にした多くの遺跡の年代観にも影響を与えます。さらに標準遺跡の問題は、陶磁史全体に波及します。

 

③ 元和城割令による破城の形態をみると、この通達は、一面ではむしろ、大身家臣統制に悩む大名家当主の意向にも即していたことがわかります。ここに、徳川幕府の大名政策論の再考の必要が生じます。

 

研究についてのこだわり

戦後史学では、朝鮮出兵など政治問題や、階級闘争史観・民衆史観に関係してくる分野の場合、軍事関連史資料に対する忌避・嫌悪の感情が前面に出て、研究の障害になっているように思われます。研究に対する現行の評価や世間受けなど、時流に安直に流されないよう、誤解・曲解する者が出るのもある程度、覚悟の上で研究すべきと思っています。

 

研究生活で最もわくわくしたこと、逆に最も落ち込んだこと

岸嶽城跡の踏査(上述)で、現在の考古学で主流を占める陶磁器編年研究には根本的な問題として、標準遺跡の認定に大きな誤りがある、その再考次第で既存の歴史像が大きく変わり得る、という確証を得た時、城郭の縄張り研究が今、最も重要であると実感しました。

 

研究生活で出会った印象的な人物やエピソード

城郭談話会の会員は、大学や上級博物館などの高等研究機関に属する方は僅かで、教育委員会の文化財部署(但し、業務は城郭以外の考古学が殆どです)や民間企業に在籍する研究者です(全うな城郭研究を志していては大学には就職できません)。この方々の間では、“お偉い大学の先生”の肩書きは一切通用しません。幾つかの城郭関連のシンポジウムで、超“お偉い大学の先生”方が、談話会の方々から高次元の異論や強烈な皮肉を込めた批判を浴びて、轟沈していました。最後には、“お偉い先生”方は居直って、全く意味のない権威を振りかざし、醜態極まる捨台詞を吐いておりました。たいへん面白く、また新鮮でした。大学を核とする“学会”組織には、このような高次元で、楽しい、緊張感のある討論があまり見受けられないように思います。本来、あるべき“学会”の姿を見ました。

 

大学院生へのメッセージ

わたくしが申したところで何ら説得力はありませんが、自身の悔いを込めて申し上げるならば、若い頃の時間は、年を取ってからの何倍にも相当する貴重なものと思います。

 

大学院生の時何をしていたか

みなさまと大差ないと思います。

 

学際連携についての思い

歴史学に関していえば、世俗に幅を利かす分野(これらが説得力のある学説とは限りません)が、利害に抵触する分野の成果を無視・黙殺する状態が長く続いています。率直に言って、本当の意味での学際連携は不可能に近いと思います。もし、可能性があるとすれば、ごく一部の少人数規模の研究会においてでしょう。

 

今後の研究・実践活動について

前掲のとおり、研究目的・方針などは一貫して変えるつもりはありません。

 

おすすめの文献

ちゃんとした歴史研究書籍を一冊、分野は問いませんので、精読することをお勧めします。無論、内容を鵜呑みにするのではなく、史料操作の方法と論理構成を意識しながらです。

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