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大学院人間環境学研究院

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教員情報
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金子 周平准教授Shuhei Kaneko

専攻 人間共生システム専攻 実践臨床心理学専攻
部門 人間科学
コース 修士: 臨床心理学指導・研究
博士: 臨床心理学指導・研究
講座 臨床心理学講座
九州大学研究者
データベース
https://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K006381/index.html  http://www.shuhei-kaneko.com/

研究内容

研究テーマ設定の背景

理論的には、人間性心理学(Humanistic Psychology)が私の実践と研究の背景になっています。この領域を代表する人としてはC.R.Rogersが有名ですが、私はMaslow, A. H.やPerls, F. S.が好きです。この2人はある時期同じコミュニティで出会っていたのですが、仲が悪かったと言われています。この2人が平行線であったのは、前者の理論的な考え方と後者の実践的な方法が交わらなかったためだと私なりに解釈しています。

 

そんな2人に共通するのは、それこそが人間性心理学の中核なのですが、「自分の特徴を最大限に活かす方法で社会に関わる」ということです。

 

私の研究テーマはバラバラですが、共通の背景があります。

・臨床心理学の領域では、理論と実践がうまく交わらないことがよく起こります。まるで上の二人のようにです。それらを付き合わせて起こる困難さが研究テーマ(問題意識)の背景となります。実践に合わせて理論を再構築する研究と理論を実践的に検証していく研究の両方が必要なのです。

・また、様々な個性を持った人たちが、その強みを活かしつつも、役に立つ心理の職業人になるためには、何らかの共通する指針が必要なのです。その指針を産むためには研究をする必要があります。自分のコミュニケーション上の癖を、理論や技法に活かして洗練させていく研究、苦手を補うための、バランスをとるための研究が必要になります。

 

調査対象についての解説

臨床心理の仕事をする上で私にとって最も重要なのは、人との関係の中で生じる私自身の個人的な感覚や感情、信念などです。このことは年を追うごとに明確になってきました。これらを研究対象とする場合は、理論研究をすることになります。こうした研究がある程度まとまってくると、自分なりの理論ができ、人間関係の中で起こる様々なことを経験したり、反応したりするための整理箱として使えるようになります。この整理箱は、一人一人が作るものですが、他の人の作り方はとても参考になりますので、それが理論研究の意義の一つになります。

 

それ以外に重要なのは、世の中についての、人間関係についての知恵です。人は自分の人生しか生きることができませんから、どうしても援助職としての間違いを冒してしまいます。それを補うのが、科学的な手続きを経た知恵です。「エビデンス」と呼ばれるもので、量的研究が必要になります。しかし実証的な研究では手に入れにくい知恵も世の中には多くあります。そのような時は、人それぞれに異なる生き方をしている人間と人間が出会ったときに起こる「エピソード」から学ぶことになります。こうした研究は、事例研究、質的研究を行うことによって新たに学ぶことになります。

 

研究についてのこだわり

どれも研究の基本的なことばかりです。

 

・オリジナル(提唱者、原典)に敬意を払う

・研究環境やツールがなければ自分で作る

・先人が参考にした、さらに先人の研究へとどんどん遡って知識を深める

・自分の考えと他の研究者の考えを明確に区別する

・私の考えの流れを、読み手が追いやすいように想像して書く

 

研究生活で最もわくわくしたこと、逆に最も落ち込んだこと

わくわくするのは、書籍の中で、学会などの交流の場で、私の考えていることに近いことを考えている人に出会った時です。孤独な悩みから救われた気持ちになりますし、研究を進めるエネルギーもそこから出てきます。

 

落ち込むことは、沢山あります。たいていは素晴らしい研究者と自分を比べてしまったり、人から思ったような評価を得られなかったりした時です。この種の落ち込みは役に立たないどころか、時間と労力の無駄ですので、自分で気づけたらやめるようにしています。

 

大学院生へのメッセージ

研究は模索の連続ですが、しっかりと行えば行うほど、自分にとっても社会にとっても役に立つものになります。

 

自分の感覚を信じて続ければ意味がわかってくることがあります。

 

根気よくこだわれば、後にバラバラだったものがつながってくることがあります。

 

今後の研究・実践活動について

薬物依存の方に関わる機会があり、そこをフィールドとした研究を始めています。

 

グループ・アプローチのセラピー要因が、彼らの孤独感・孤立感の変化をもたらすかどうか、一人で依存と戦わずに、人と一緒に取り組むために役に立つか否かというテーマに関心を持っています。

 

おすすめの文献

○P. サンダース(編著)(2004/2007)『パーソンセンタード・アプローチの最前線』コスモス・ライブラリー

○A. H. マズロー(1970/1987)『人間性の心理学』産業能率大学出版部刊

○F. S. パールズ(1973/1990)『ゲシュタルト療法』ナカニシヤ出版

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