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大学院人間環境学研究院

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教員情報
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元兼 正浩教授Masahiro Motokane

専攻 教育システム専攻
部門 教育学
コース 修士: 現代教育実践システム
博士: 教育学
講座 教育社会計画学講座
九州大学研究者
データベース
https://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K000588/index.html  http://www.education.kyushu-u.ac.jp/

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研究内容

Q.なぜ、その研究テーマを設定したのですか?

博士学位論文が校長職の法制史研究であるように、若い頃は主に教育法制や歴史研究に取り組んでいました。当時の教育法学研究はイデオロギー色を引きずっており、行政批判をすることが仕事(カウンター教育行政学)のような匂いが残っていました。校長人事にわだかまりとこだわりを持っていた当時の若かった私にはそれは魅力的でもありました。

 

その後、教員養成系大学に就職したこともあって、「校長になること」への批判的な検討ばかりではなく、現実問題として校長を「どう育てていくか」を考えることが必要であるという思いに至りました。校長を支援する学校経営コンサルテーションや次世代の校長を養成する「スクールリーダー教育」に研究テーマがシフトしているのはそのためです。

 

Q.研究方法を教えて下さい。

出自が「教育法制」ということもあって、研究対象へのこだわりはあっても、研究方法論についてのこだわりは強くありませんでした。教育法学の通説をもとに条理解釈を行うというものだったからです。その後、法社会学的研究にシフトし、量的調査も質的研究も行って参りましたが、いずれも中途半端なものにすぎません。経営学的研究を行うようになってからは、実務的に研究対象に関わりながら研究を進めるアクションリサーチの手法に近くなっています。ただ、対象となる学校や行政機関は自分の理論の証明のための実験場ではなく、現場の当該課題に寄り添い、調査などで現場を荒らさす、現実が改善されるような提案をしていくことを心がけていますので、あまり研究自体はすすんでおりません。

 

―具体的には、どのような調査対象や調査地に入ってきましたか?

2003年に九州大学に赴任して、まず県内でも最先端の水準の教育行政を展開している春日市教育委員会と連携の覚え書きを交わし(2004年5月)、福岡県小学校長会との連携構築にも着手しました。そのお陰で院生や学部学生の調査研究などにも全面的に協力をいただいております。九大の立ち位置に鑑み、九州地区に責任をもつべきだと考えてきましたが、最近の調査対象は国内外に広がっており、学校統廃合研究では全国を駆け廻っていますし、校長養成調査ではソウル大学校附属教育行政研究院での参与観察を中心にしながらも、米国ハーバード大学校長職センターにもヒアリング調査に行きました。

 

Q.研究についてのこだわり、心がけていることはありますか?

研究方法論よりもやはり研究対象(学校、校長・教員、教育行政)に関するこだわりがあります。研究方法論というメスの切れ味を試すために学校や教育が存在するわけでなく、現実問題としての子どもや学校や教育の諸問題に対し「よりよく」するために研究もあると考えています。研究方法は対象に合わせて多様な方法から選んでいけばよいと思います。ただ、現場の改善に深く関わるほど、対象との距離感をどう取るかが難しい。近すぎると倫理上、“研究”の形にできない情報を持ちすぎてしまうし、遠すぎると実態と研究結果にズレが生じてしまう。「ための研究」でないことを心がけていますが、研究者として現実に向き合うことの困難性はいつも抱えています。

 

Q.研究生活で最も落ち込むとき、逆に、最もわくわくする瞬間はどんなときですか?

プライベートな部分と研究生活は不可分ですが、人生の喜怒哀楽に出会っても心の平静を保ち「焦らず、腐らず」の精神を心掛けています。研究上における「産み」の苦しみは楽しみでもあり、むしろ雑事に追われ「研究に向き合えない」ことが最大のストレスです。

 

研究のアウトプットがこれからどうなっていくのか自分でも分からないことにわくわくし、新しい知が生まれていくことに喜びを感じます。特に、共同で研究していくと、それぞれの視角から検討を重ね、個人ではまったく予期しえないものが生みだされていくことはその醍醐味です。多彩な人材が集う九州大学に所属する楽しさはまさにそこにあります。

 

Q.ご自身が大学院生のときは何をされていましたか?

塾講師と家庭教師の仕事に日々追われ、ほめられた学生ではありませんでした。体力にまかせ、ほぼ徹夜と一夜漬けの連続のような研究の仕方を続けていました。関心のあった校長人事異動の実証的研究は当時の研究室の本流とは異なる研究でしたので教授に隠れてこっそりしていましたが、それがのちの研究のベースになりました。

 

―特に印象に残っている出来事はありますか?

今もお世話になっている芦屋町の中島幸夫教育長との出会いは鹿児島本線での「ナンパ」でした。院生で初めて執筆した教育雑誌を車内で熱心に読んでいる姿をたまたま見かけ、嬉しくなって声をかけて(人生で最初の?ナンパでした)以来、調査協力をしてくれたり、ネットワークを紹介していただいたり、随所で可愛がってもらっています。

 

Q.学際連携についての思いを教えてください。

新たな知を生み出す可能性を感じますし、「他流試合」により自身の立ち位置を確認することもできると思います。できれば人間環境学府という枠に拘らず、また学部生等も巻き込んでいきたい。2012〜14年度は学校トイレを、2015〜17年度は通学路を、そして2018年度〜は地震・⽔害、新型コロナウイルスといった学校の危機をテーマに多分野連携プログラムを⾏っています。

 

Q.今後の研究・実践活動はどのように行っていきますか?

注目される教育委員会制度論や自治体再編の影響など今一度原点に立ち戻って教育行政学研究に取組みたいと思います。

 

Q.最後に、大学院生へのメッセージをお願いします。

あきらめないこと。

続けること。楽しむこと。

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