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大学院人間環境学研究院

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教員情報
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黒瀬 武史教授Takefumi Kurose

専攻 都市共生デザイン専攻
部門 都市・建築学
コース 修士: アーバンデザイン学
博士: 都市共生デザイン
講座 計画環境系講座
九州大学研究者
データベース
https://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K006363/index.html

研究内容

研究テーマ設定の背景

従来の行政の枠組みや都市計画の方法では、うまく解決できない現実の都市の課題を研究テーマにしています。土壌汚染のある工場跡地(欧米ではBrownfieldと呼ばれます)の再生が、最初の研究テーマでした。汚染があるから開発できないと考える都市計画と、開発の需要がないから汚染の浄化資金の目処が立たない、環境保護行政の境界で、停滞した米国北東部の工業都市を対象に研究をしてきました。

 

二点目の人口減少や市街地の縮退は、それら工業都市がBrownfieldと同時に直面している課題であり、日本でもこれから重要な問題となる分野だと考えています。

 

三点目の民間開発による公共領域の創出は、民間企業で働いたときの経験と問題意識から生まれました。大規模な都市開発では、行政と民間が事前に協議をして、公開空地(広場のような多くの人が使える場所)の設置と引き換えに、巨大なビルを作ることが認められています。しかし、そのような経緯で生まれた公開空地は、必ずしも利用者の立場で計画されていませんし、完成後に活用されていない場合もあります。行政の予算が厳しくなるなかで、公共空間を形作る重要な手法ですが、改善できる部分もあると考えています。

 

研究手法

現実の都市の中にある様々な取組事例が研究対象です。世界中で都市空間を対象に様々な取組が行われていますが、それらの事例をある条件下での実験と捉えて分析し、重要な条件・手順を抽出したりすることで、他の場所や国でも適用可能な手法として一般化する可能性を探ります。現在の都市空間の観察、歴史的な変遷の確認、取組に携わった方々への聞き取り調査などが、研究の基礎となる情報収集の方法です。

 

調査対象や調査地についての解説

米国の北東部の中小の工業都市を事例に調査を進めてきました。人口が過去50年で半減した都市も珍しくありませんが、自宅の横の空き地に菜園ができたり、都心部に大きな緑地が生まれたり。人口減少も悪いことばかりではありません。

 

歴史的に多くの移民を受け入れてきた街も多く、例えばカンボジア料理やギリシャ料理など、アメリカに居ながらにして色々な国の食事を楽しめることも、食いしん坊の私にとっては隠れた魅力です。

 

研究についてのこだわり

大切なこと、面白いことは、都市の現場から始まると考えています。結論が見えないなかでも、都市の実態や現場の取組をじっくり分析する根気が大切だと思います。

 

研究生活で最もわくわくしたこと、逆に最も落ち込んだこと

新しい街を歩くときは、どんなまちでも最高にわくわくしています。最初は地図を見ずに心の赴くままに歩きまわって、二度目は、そのまちの昔の地図を見ながら、じっくりと味わいながら歩きます。もう一つは、自分が関わったまちが、現実に生まれていく瞬間に立ち会うことです。思い描いた風景と現場のまちが一致したとき(実はなかなかないのですが)は、都市デザインを専門にしていて良かったなあと心から感じます。

 

落ち込むというよりも、がんばらなくては!と思うときは、現実の課題を、うまく分析できず、前向きな提案や議論ができないときです。都市の現場には沢山の方々が関わっています。多くの人が納得する論理や設計を提案できなければ、物事は動きません。一方で、専門家として、長い目で都市を捉え、中立的立場で議論することも求められます。大変なこともありますが、豊かで、難解な、都市という対象に、日々楽しませてもらっています。

 

研究生活で出会った印象的な人物やエピソード

私の恩師は、大小問わず、日本中のまちや村を歩き、そのまちの魅力を本当に嬉しそうに語る人です。その先生から唯一厳しく教わったのは、「まちに生きる一人一人の生活をどこまで想像できているか」常に自問自答せよということでした。都市に暮らす、自分とは異なる立場の沢山の人たちのことを想像できない人間に、都市を計画する資格はないと。何かに迷ったときは、この言葉を思い出すようにしています。

 

大学院生へのメッセージ

自分の時間の大半を、興味を持ったことに注ぎ込める、人生の中でも贅沢な時間です。あまり計算高くならずに、壮大な無駄も恐れずに、時間を使って欲しいと思います。

 

大学院生の時何をしていたか

と、偉そうなことを書きましたが、僕も自分が何をやりたいのか、ぼんやりとしか、わかりませんでした。研究室の同期や先輩、まちの人たちと一緒に取り組んだまちづくりのプロジェクトに、大学院の時間の大半を使った気がします。学部時代の机上の空論ではなく、リアクションがしっかりと返ってくる現場は、とても魅力的なものでした。

 

学際連携についての思い

私が対象とする都市は、複雑かつ多様であり、多面的なアプローチが必要なものだと考えています。なかでも、私の研究対象は、産業・環境・都市計画など様々な分野が重なりあう部分です。多くの方々と連携して、より深く都市を捉えたいと考えています。

 

今後の研究・実践活動について

北米を研究対象地にしてきましたが、西日本や東アジアの都市を対象地に加えていきたいと考えています。地元の福岡でも、分析、理論化と実践を積み重ねて行きたいですね。

 

おすすめの文献

○ある都市のれきし―横浜・330年(たくさんのふしぎ傑作集)(大型本)

北沢 猛(著)、内山 正(イラスト)、福音館書店

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