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大学院人間環境学研究院

長沼 祥太郎

AI時代」に突入することを前提にして、これからの大学の教育・学習を未来志向的にデザインするために、以下の5つのPiller(柱)を中心に様々な研究を進めています。これらのテーマは、いずれも「未来の大学における学びの在り方」を探究するための多様な入り口となります。各Pillarにおける学習環境の設計・分析・評価において、生成AI/AR/VR/LA(学習分析)などのテクノロジーを積極的に活用するところに一つの特徴があります。ただし、「未来の大学の学びのデザインとしてこれを研究していく必要があると思います!」と主張できるのであれば、下記のPillarに捉われすぎる必要はありません。ぜひ、一緒に考えてみましょう!

Pillar 1| AI時代の越境的学習デザイン
Pillar 2| AI時代の分野別教育研究(DBER)
Pillar 3| AI時代に学習者のウェルビーイングを高める学習環境のデザイン
Pillar 4| AI時代の学習目標・評価に関する研究
Pillar 5| 大学教育プログラムの歴史的・比較的研究

山本 健太郎

研究テーマ設定の背景

修士課程に進学した際に専門分野が発達心理学から知覚心理学に変わり、研究テーマを色々と考えていたときに指導教官の先生が科研のプロジェクトで「時間」に関する研究を進めており、それに興味を持ったのがきっかけでした。現在では少しずつ幅を広げながらも、時間の研究に中心的に従事しています。

 

研究手法

主にコンピュータを用いて視覚的な刺激をディスプレイ上に呈示し、心理物理学的手法を用いて実験参加者の知覚や印象を測定しています。場合によっては、眼球運動を計測して無意識的な心の働きを探るなど、生理的な反応を同時に取るような方法を扱うこともあります。

 

調査対象や調査地についての解説

個人を対象として研究を行っています。年齢層としては主に成人(大学生)を対象としていますが、発達研究を行っていた際は乳幼児を対象としていました。特に研究対象にこだわりがあるわけではなく、明らかにしたい現象・仮説によって研究対象や手法も柔軟に変えていくべきだと考えています。

 

分析のためのソフトウェアやツール

データの整理や簡単な分析にはExcelを用いています。複雑な分析の場合にはRやSPSSなどのソフトウェアを状況に応じて使い分けています。

 

研究についてのこだわり

研究を行う上では、素朴な疑問を大事にしています。最先端の研究を追おうとすると、どうしても技術的な部分に走りがちで、本来の目的を見失ってしまいそうになります。そうならないためにも、研究のスタート地点である素朴な疑問を忘れず、研究を進めて行きたいと考えています。また実験デザインの際には、刺激や条件の統制方法に特に重点を置いています。

 

研究生活で最もわくわくしたこと、逆に最も落ち込んだこと

新しい仮説を思いついたり、面白い実験方法を見つけたりしたときはとてもわくわくします。実験が上手くいかないときはいつも落ち込みますが、投稿した論文がさんざん待たされた挙げ句に一発でリジェクト(不採択)になったときは特にへこみました。

 

研究生活で出会った印象的な人物やエピソード

印象的な人物と言えば、やはり大学院時代の先輩方たちでしょうか。いつも一緒に遊んで(?)いるのにどんどん業績が増えていて、一体いつ研究をやっているんだ、と思ったこともありますし、学位を取った後に一般企業に就職したのに、気づいたらアカデミックなポジションに戻ってきた奇特な人も居ます。他にも優秀な先輩方が多く、今も心理学の分野でご活躍されています。

 

大学院生へのメッセージ

院生時代は自分の実験がうまく行かずに落ち込んだり、周りの人たちの業績が増えていくのに焦ったりすることが多々あるかと思います。ただ、あまり目先のことばかりにとらわれていてもしょうがありませんので、長期的な目標を立てて地道に歩んで行くのがいいのではないかと思います。特に研究の世界ではいつ何が功を奏すかわからず、無駄だと思っていた経験が後に大きな武器となることもあります。周りに流されずにぜひ自分の道を貫いて下さい。

 

大学院生の時何をしていたか

ずっと集中して研究するというよりも、要所要所で研究に打ち込むタイプだったように思います。普段は論文を読みながら雑談したり、プログラムをいじって面白い現象を探したりもしていました。ただ大学は好きで(ほぼ)毎日行ってましたし、学会にも結構頻繁に参加していました。今の知り合いは院生時代に知り合った方がほとんどですね。

 

学際連携についての思い

心理学では特殊な機材や技術を使うことがあまりないので、すぐに何が提供できるかと問われると難しい部分があります。ただ、他の分野の研究を聞いているうちに面白い発想が浮かぶことはよくあるので、積極的に交流して連携できる部分を模索していければと考えています。

 

今後の研究・実践活動について

今までは堅い仕事が多かったように思うので、一見突飛なことにも挑戦していきたいです。

 

おすすめの文献

○感性認知—アイステーシスの心理学 北大路書房

○脳と時間: 神経科学と物理学で解き明かす〈時間〉の謎 森北出版

○サブリミナル・マインド 中公新書

池田 浩

研究テーマ設定の背景

小さいころからリーダー的な役割を担う機会が多くあり、みんなをまとめることの難しさをいつも感じていました。そして、大学時代に受講した集団心理学の講義のなかで、リーダーシップのテーマに興味を惹かれ、これを研究して世の中に役立てたいと思い、大学院進学を決意しました。それ以来、「リーダーシップ」のテーマを卒業論文から研究の柱として一貫して取り組み続けつつ、またそれに関連してチームやモチベーションの研究にも取り組んでいます。

 

研究手法

調査や実験をメインな研究手法としていますが、組織の現場に足を運び、観察やインタビューすることも大事にしています。

 

調査対象や調査地についての解説

取り組んでいるリーダーシップなどの研究テーマは、様々な組織と関わる問題であるため企業や病院、公務員、あるいは学校を対象にしています。

 

分析のためのソフトウェアやツール

主に量的なデータを扱うことが多いため、ExcelやSPSSを用いています。研究についてのこだわりいくつかありますが、まず一つは「リーダーシップ」研究にこだわることです。私が研究を志す頃に、リーダーシップについては莫大に研究が行われてきて、新しさやオリジナリティを出すのは容易ではない、と聞かされました。確かに、大学院において学位(博士号)を取得するためには、自分の研究を論文としてまとめ、それが学会が発行している学術雑誌に掲載される必要があります。特に、学術誌に論文を投稿した際に、同じ専門分野の複数の先生から審査を受けますが、競争が激しい研究テーマで新しさを出すのは容易ではありません。実際に、最初の頃はかなり苦労しました。現在でも競争の激しいテーマであることには変わりはありあせんが、自分が取り組みたいと思ったテーマだけに、大事に、そして今後も果敢に挑戦していきたいと思っています。

 

二つ目は、組織の現場にこだわるということです。九州大学の社会心理学研究室(集団力学講座)では、古くから組織の現場でアクションリサーチに取り組んできました。私もそこに興味と意義を感じて研究を志しましたので、そこにこだわりを持って取り組んでいきたいと思います。

 

研究生活で最もわくわくしたこと、逆に最も落ち込んだこと

実験にしても、調査にしてもデータを分析して、その結果を確認するとき。あるいは、論文の査読結果が届いたとき、わくわくします。

 

逆に、なかなか研究が進まないときや研究論文の査読結果を見て、こちらの主張が十分に伝わっていないときには落ち込むこともあります。

 

研究生活で出会った印象的な人物やエピソード

大学を離れて、組織現場の方々や社会人の方とお話をすると、専門的な情報や意見が求められることがあります。そのたびに、研究することの社会的な意義を強く感じ、身の引き締まる思いになります。

 

大学院生へのメッセージ

研究は一朝一夕ではできません。着実に一歩一歩取り組んで下さい。

 

大学院生の時何をしていたか

とにかく朝から夜遅くまで研究室にいました。ひたすら論文や本を読んだり、データ分析に没頭したり、論文書いていました。一見すると孤独のように思いますが、刺激し会える研究室の仲間にも恵まれて、充実した大学院生活でした。

 

学際連携についての思い

3年ほど前から、とある縁で経営学(組織行動論)の先生と共同研究を続けています。私の専門である産業・組織心理学と組織行動論は、扱っているテーマは近いものの、専門が経営学と心理学と異なっていることから、考え方やアプローチが異なり、良い刺激を受けています。

 

学際的な研究は今後ますます必要になることは間違いありません。多様な社会的問題を解決するときにも、1つのディッシプリンからのアプローチではなく、複数のそれが関わることで創造的な問題解決が可能になるかと思います。ただし、個人的には学際的な研究を行う前提として、まずは自分の専門性をしっかり確立することが必要かと考えています。

 

今後の研究・実践活動について

取り組みたい研究は山ほどありますが、まず第1に「サーバント・リーダーシップ」の育成と開発に取り組みたいと思っています。サーバント・リーダーシップは、新しいアプローチでその必要性は広く認識されつつありますが、サーバント・リーダーをどう育成し、実践するかは今後の大きな課題と言えます。

 

第2に、効果的なリーダーシップを引き出す条件としての「フォロワー」の役割(フォロワーシップ)についても検討したいと考えています。これまでリーダーシップばかりに脚光が浴び、フォロワーの存在についてはあまり注目されていませんでした。

 

第3は、効果的なモチベーション・マネジメントの方略に関する研究です。最近では、組織において非正規社員の増加やシニア世代のマネジメントなど、新しい問題に直面しており、従来のマネジメントではモチベーションを鼓舞することは難しくなってきています。こうした問題に対しても、効果的に対処できる方法を考案したいと思っています。

 

おすすめの文献

○マロー, A. J. 望月衛(訳)『KURT LEWIN : その生涯と業績』 誠信書房

○古川久敬(著)『構造こわし-組織変革の心理学-』誠信書房

田中 観自

光藤 宏行

研究テーマ設定の背景

工学部でデザインの勉強をしていた時に、人間を対象とする科学(私の場合は、心理学)があることを知って、真面目に取り組みたいと思いました。錯視などは簡単そうだし(実際にはそんなことはありませんでしたが)、これなら誰でもできそうだ、とも思いました。より真面目に言えば、物質である脳が物質ではない意識を作り出すのはなぜか、という問いに、大学生の時から惹き付けられ続けています。

 

研究手法

心理物理学的手法を用いて、人間の知覚の仕組みを理解することを目指す実験を行っています。実験装置や器具は、市販の部品を組み合せて自作することが多いです。また、人間の知覚について、計算機によるシミュレーションも行っています。

 

調査対象や調査地についての解説

大ざっぱに言えば、近くの人々に実験協力のお願いをして、実験室に来てもらい、実験室で実験を行っています。近くの人々とは、自分自身、研究室の学部生・大学院生、知り合いが多いです。実験室は、伊都キャンパスの行動実験棟にあります。

 

分析のためのソフトウェアやツール

あまりこだわりはありませんが、今は、知覚心理学実験のための刺激作成とデータ取得のためのプログラム作成には、たいていMacOSXのXcodeを使っています。統計処理やグラフの作成にはソフトウェアのRを使っています。計算機による人間の知覚のシミュレーションは、XcodeとRの両方を使うことが多いです。

 

論文原稿は、Microsoft Wordを使って書きます。版組を自分で行う必要があるときは、LaTexを使うことが多いです。

 

研究についてのこだわり

流行のテーマをできるだけ把握して、それらからなるべく離れた問題に取り組むように心がけています。関連しますが、誰でも思いつきそうなこと、できそうなことはしたくないと思っています。

 

研究生活で最もわくわくしたこと、逆に最も落ち込んだこと

最もわくわくしたのは、まだこの世界で誰も発見していない知覚現象を見つけたと思う瞬間です(勘違いも多くありますけれど)。逆に最も落ち込んだのは、気合いを入れて書いた論文のリジェクト(却下)通知を受け取った時です。

 

研究生活で出会った印象的な人物やエピソード

昔の心理学研究室の箱田裕司先生、三浦佳世先生、中溝幸夫先生です。修士1年生のとき、大学院人間環境学府を受験しようと考えて心理学研究室を千葉から訪れた時、非常に親切に応対していただきました。見ず知らずの人に対して、こんな丁寧なやりとりをする方たちがいるのかと、感激しました。そして博士後期課程から人間環境学府に編入学しました。それから出会った研究室の友人の中には、プログラミングの腕がプロフェッショナルな先輩がいたり、睡眠時間を極端に削って研究に打ち込む後輩がいたりして、刺激的な毎日でした。

 

大学院生へのメッセージ

真面目に言いますと、社会人としての常識を踏まえつつ、好き放題にやってください。教員はあまり賢くないと仮定して(仮定の話です)、教員を超えてください。教員を超えた能力や知識を身につけたことを、証拠を携えて教員に伝えることができればベストだと思っています。

 

大学院生の時何をしていたか

正直に言いますと、修士課程の頃は夕方に研究室に来て、まず友達と夕食に出かけました。そしていろいろなレクリエーションを行いながら、実験について考え、プログラムを作って、論文を読み書きし、明け方に帰宅していました。ゼミは夕方に開かれていたので、先生にいつも「君、寝起き?」とよく聞かれ、「はい」とよく答えていました。

 

博士後期課程のときは自分の生活スタイルを反省し、昼頃には大学に行き、レクリエーションの時間を減らし、論文の読み書きのために時間を割きました。

 

学際連携についての思い

できることなら何でもやります。

 

今後の研究・実践活動について

今後の研究については、長期的には、人間の主観的な意識はどのように生じているのか、という問いの答えに迫れたらと思っています。まだ誰も気がついていない問題の切り口を考えて、脳機能の測定を同時に含められるような、ユニークな研究がしたいです。

 

おすすめの文献

○越智啓太(編)(2018)意識的な行動の無意識的な理由:心理学ビジュアル百科認知心理学編創元社

○日本視覚学会(編)(2000).視覚情報処理ハンドブック朝倉書店

橋彌 和秀

研究テーマ設定の背景

ヒトと社会に関心があって、高校生のときは「臨床心理学をやりたい」と思っていました。それで教育学部に入学したのですが、3年生の頃まで、あまり講義にも出ずに色々考えた結果、「どうも、自分がやりたいのは臨床心理学とは違うらしい」ことがようやくわかりました。それで、ヒトを知る上で、一旦ヒトから離れるのも面白いんじゃないかと思って、理学研究科の大学院に進学し、霊長類研究所というところで6年間チンパンジーの研究をしました。博士課程の後半でニホンザルの赤ちゃん研究も始め、ポスドクで霊長研を出てからヒトの赤ちゃんの研究もするようになって現在に至ります。相手が「ことばで教えてはくれない」中で彼らの行動の特性に配慮しながら、思考や「こころ」のありようをうまく切り出すセットアップをいかに組んでいくか、という方法論の上では、ヒトの赤ちゃんの研究と、ヒト以外の動物研究には似た部分も多いのです(もちろんそれぞれに配慮すべきことはありますが)。おとなの行動研究に関しても同じことが言えます。

 

たとえば「わたしとは何か」という問いは私にはまったく意味不明で(笑)、からっきし関心がないのですが、「人間」「ヒト」には、その清濁も込みで惹きつけられてきました。学部生の頃に友だちと議論に(文字通り)明け暮れたり、いろいろとバイトをしたり、そのお金でネパールとかアフリカにひとりで出かけたりする中で、進化というタイムスパンを含めてヒトを見ることの面白さや、自然科学という方法の、限界はあるけれども「健全」な部分に惹かれるようになって今の研究をしている、という感じです。

 

研究手法

現象を観察して問うべき問いを抽出する作業が何よりも大事だし、全ての基本。ただ、自分なんてあてになりませんから、そこで見たものがどこまで「ほんとう」かわからない。見当違いや勘違い、妄想かもしれない。それを検証する方法として、そして、検証したものを他者に伝え共有する手段として、自然科学の方法はそれなりに妥当な技術だと考えています。科学は方法論でしかないわけですが、デザインさえしっかりしていれば、「データの7-8割方は仮説どおりなんだけど・・・」というときに、残りの2-3割が、自分たち自身の思考の枠組みの狂いを修正してくれることも多い。

 

調査対象や調査地についての解説

2003年から開始したボランティア・パネル「九州大学赤ちゃん研究員」に登録いただいた0歳児から5歳までの子どもさんと保護者の方に、研究協力をお願いしています。登録してくださっているのは現在900人あまり。研究の比較対象として成人のデータをとることもよくありますし、共同研究として学外でチンパンジーなどの実験をおこなうこともあります。海外にいる共同研究者のおかげで、国際比較も必要な場合にはおこなえる体制が整いつつあります。

 

分析のためのソフトウェアやツール

実験の目的に合わせて毎回、最適だと思う実験装置やデザイン、セットアップを検討しますが、なかったら実験できないのでなく、なかったら作ります。たとえば最近も、母子の相互の視線を記録分析するシステムを作る計画を、共同で進めているところです。

 

研究についてのこだわり

「こだわり」と言うことではなく、研究をおこなう上で当たり前のことちゃんとやる。海外の巨大なラボと同じことをしようとしても、スピードや規模では勝てない。でも、オリジナルなもの、「そこには気付かなかった」という視点を提示することはできる。「スキマ産業」の面白さがあるし、スキマでしかできないこともあると思っています。それから、少なくとも私たちの分野では、論文は英語で書くのが基本です。英語で書けば日本の人にも海外の人にも読んでもらえるけれど、日本語で書いたら日本の知り合いしか読んでくれない。

 

研究生活で最もわくわくしたこと、逆に最も落ち込んだこと

データの分析があがるたびに、わくわくします。「今までなかった研究」をしているつもりであるかぎり、あがってくるデータというのは、世界の誰もまだ知らない、見たことがないもののはずだから、わくわくしないわけがない。

 

落ち込んだ、ということはないですね。落ち込んでいる暇があったら、次の何かをしましょうという感じです。例えば、自分の投稿した論文がリジェクトされたり、大幅な修正が来たりすると、当然ムカっとはしますけど、それは自分たちの声がちゃんと届かなかったということで、反省はするけど落ち込むところではない。

 

研究生活で出会った印象的な人物やエピソード

チンパンジーから研究のキャリアを始めたのはすごくおもしろかったな、とは思います。6年間毎日のように顔を合わせていたチンパンジーは「パン」という名前でしたが、研究対象なんだけど研究のパートナーでもある。体重が50kg、握力が100kg以上ある「幼稚園児」が三次元に動きまわるのを想像してくれるといいかもしれません。言葉は通じない。腕っ節は強い。それでいて確実に「何か」を「もって」いる。ヒトだけの基準からすれば相当に「変わった他者」なわけです。当時はあまり感じなかったけれど、ただただチンパンジーを眺めていたり、いっしょにケージに入ってパンのお腹を枕に昼寝をしたりしていたのは、今の自分の思考の軸のようなものを形成する上でも濃厚な時間だったなあ、と思います。私は優秀な学生には程遠くて、あの濃厚な時間をもっと大切に使えばよかったとも思うのですが、その中で研究をビシビシやっている先輩・友人や先生たちにも本当にお世話になりました。

 

大学院生へのメッセージ

大学院は自分で研究をするところですから、ただ「欲することをおこなって」ください。それでだめなら研究者にはなれない、というそれ以上でもそれ以下でもないので、他の道を探すしかありません。研究の王道をいけるなら(そんなものがあるなら)それもいいし、存分に逸脱するのも面白いと思います。近年の大学は、大学院も含めて学生が「お客さん」になることをよしとしてしまっている側面があり、「教育」がサービス化することで、大学で行うべき「研究」が崩壊しかねない、というバランスの悪いことになっています(もちろんこれは、それ以前に教員がお大尽ぶっていたという悪習の反動なのですが)。教員が研究者としてロール・モデルになる、というのが本来の大学の教育のありかただと私は信じていますので、そうなるためにも、緊張感を持ってお互い真剣に渡り合いたいです。

 

大学院生の時何をしていたか

研究してました(そう見えなかったとしても)。ただ、どういう方法論をとるか、これでいいのか、これで何がわかるのかと研究をやる上での悩みも多くて、手を動かさずにいた時間もかなり長かったです。「今思えばその時間も意味があった」といえなくはないのですが、結局、手を動かしながら考えても同じことだったんですね(笑)。だったらもっと手を動かしながらあの時間を使えばよかったなあという後悔は今もあります。でも、言い訳がましいですが、日本語・英語問わず本と論文はかなり読んでいたと思います。あ。英語も読まないとだめです。英語が偉いなんてことではもちろんなくて、研究者のコミュニティを国内に閉じるのはつまらない、という意味で。

 

学際連携についての思い

分野が違っても、お互いが何をやっているか目に見えていて、お互いの気配を感じている。そして、一緒にやりたいときにできるというのが、本当の意味での学際連携だと思います。今、それができるように取り組んでいることは非常に大事なことで、「学際連携」と言わなくても、それが空気のようにあたり前になるといいですね。そのためには、研究上の連携だけじゃなくて、「一緒に飲む」とか、そういう場所も必要だと本気で思います。

 

今後の研究・実践活動について

自分の“sense of wonder”に従って、ほんとうに面白いと感じられることをやっていくことしかできません。もちろん、そのための知識も技術もブラッシュアップしなくてはいけないと思っています。世界中でやってるのに、やるべきことがまだまだ無限にあるのが、研究のすごいところです。寺田寅彦が「研究というのは、暗闇の中を蝋燭を持って歩くようなものだ」と言ってますよね。一歩進んだら、目の前は明るくなるんだけど、その先に次の闇が広がっていく。その繰り返し。パン屋さんが毎日パンを焼くように、レンガ職人さんが毎日レンガを積むように、「面白い」研究をやりたい。それをちゃんと発信する。自分たちの研究が、結果として、誰かを感動させたり誰かの「役に立つ」ことがあればほんとうにうれしいけれど、「役に立つ」ことだけを目指してあらかじめ「マーケット」を絞った研究をすることには、研究が本来もっている自由さを損なう危険もあると考えています。

 

おすすめの文献

○「利己的な遺伝子」リチャード・ド―キンス

○「内なる目 意識の進化論」ニコラス・ハンフリー

○「<子ども>のための哲学」永井均

○「アイデン&ティティ」みうらじゅん

伊藤 崇達

研究テーマ設定の背景

学びの主体性についての追究は、教育心理学における普遍的テーマです。また、教育理念としても、自ら学ぶ力の育成が求められ続けています。欧米では、自己調整学習(self-regulated learning)に関する理論と実証的研究がめざましい展開をみせています。

 

 

生涯にわたって人が自ら学び続けるとはどういうことか、高いモティベーションを支える要件とは何か、そして、いかにして子どもたちを支援してゆけばよいか、これらのことが自分の中での大きなテーマとなっています。「主体的な学び」のみならず「主体的な学びあい」について、エビデンスをもとに、よりよい実践のあり方について検討を進めているところです。

 

 

研究手法

量的アプローチとしては、調査法、実験法などを用いてきました。また、質的アプローチとしては、発話分析や記述の内容分析などによって研究に取り組んでいます。これらの研究手法を駆使し、マルチメソッド(混合研究法)によって検討を進めるように努めてきているところです。

 

 

調査対象や調査地についての解説

児童・生徒から大学生、社会人までを対象としています。発達段階でいうと、児童期、青年期、成人期に相当します。これまでの勤務の経歴から、研究活動は、関西圏の学校現場が中心になります。

 

 

研究についてのこだわり

まず、学習者のニーズのありかを常に考慮するようにしています。そして、現場の実践に寄り添いつつ、研究がどのような貢献をなしえるかについて考えるようにしています。その上で、研究のグローバルな進展に目を向けるようにしています。

 

 

研究生活で最もわくわくしたこと、逆に最も落ち込んだこと

新しい研究のアイディアや方向性が閃いたときや、分析結果から新しい知見を見出したときに、とてもわくわくします。

 

 

一方で、手塩にかけた研究の成果にもかかわらず、なかなか実践への寄与が見通せないときなど、やはり無力感に苛まれることがあります。

 

 

研究生活で出会った印象的な人物やエピソード

私の中で、お二人の恩師の存在が大きいです。小石寛文先生は、学部時代と修士課程の時代に多大なお世話になり、研究はとても自由なものであり、「遊藝」の境地で楽しむことを教えていただきました。速水敏彦先生は、博士課程の時代に深くお世話になり、世界中の研究を渉猟すること、研究者として求道する精神を教えていただきました。

 

 

大学院生へのメッセージ

二人の恩師から学んだことになりますが、研究に取り組むにあたって3つのことを大切にし、折にふれて振り返っていただければ幸いです。1つめは、研究の文脈において、どのような意義があり、新たな貢献ができるかということ。2つめは、研究の成果が、実社会や現場の実践に対して、どのような示唆を与えうるかということ。3つめは、それは、自分が本当に成し遂げたいと思っていることかどうか、ということです。研究において壁に突き当たったときなど、これらの3つがバランスよく実現できているか、見つめ直してみると良いのではないかと思います。

 

 

大学院生の時何をしていたか

修士課程は神戸で2年間を過ごし、博士課程は名古屋で2年間を過ごしました。この4年間は密度が濃く、ほとんど研究中心の生活で、論文の執筆に専念していました。研究に行き詰ったとき、史跡巡りをするのが気分転換法で、神戸では、源平合戦にまつわる史跡、名古屋では、桶狭間古戦場や旧街道などを散策していました。

 

 

学際連携についての思い

狭い専門の領域で取り組んでまいりましたので、自分に何ができるのか、心許なくありますが、何かご一緒させていただく機会がございましたら光栄に存じます。小さな一歩ずつでも、できることがあればありがたく存じます。

 

 

今後の研究・実践活動について

初心を忘れずに、さらに精進を重ねてまいりたいと思っております。これまでに取り組んできたことにとらわれることなく、新たな研究テーマにも挑戦していきたいと考えています。

 

 

おすすめの文献

○伊藤崇達『自己調整学習の成立過程―学習方略と動機づけの役割』北大路書房 2009年

○塚野州一・伊藤崇達(監訳)『自己調整学習ハンドブック』北大路書房 2014年

○西口利文・植村善太郎・伊藤崇達『グループディスカッション―心理学から考える活性化の方法』金子書房 2020年

實藤 和佳子

研究テーマ設定の背景

あるとき、じーっと何かを一心に見つめる赤ちゃんを見かけて、今この子はどんなことを考えているんだろうと関心をもちました。私はもともと赤ちゃんや子どもが大好きなこともあり、赤ちゃんや子どもが自分の周りの世界をどう理解しているのか知りたいなと思ったのが発達心理学を専攻しようと思ったきっかけです。大学入学後、ボランティア活動を通じて自閉症をもつ子ども達と色々な体験を共有させてもらったことから、発達の個人差と多様性についても視野に入れた研究をしたいと思いました。

 

研究手法

乳幼児に直接会って、調べたいことをもとに設定した課題を実施したり、特定場面の観察をしたりして、その行動や反応を記録しています。発達検査を実施して、一人一人の乳幼児の特徴を把握することもあります。

 

調査対象についての解説

産まれたばかりの赤ちゃん(新生児)から小学校に上がる前の子ども達を中心に調査をしていますが、小学生や中学生、養育者を対象にした調査を実施することもあります。

 

分析のためのソフトウェアやツール

Excelでデータを整理・管理しながら、SPSSなどの統計ソフト等で分析しています。

 

研究についてのこだわり

一つの研究からは、ほんの少しの側面しか窺い知ることができません。それは一種の真実を反映していると思いますが、発達には個人差が大きいために、特に個別の発達支援を考える際は必ずしもこれまでの研究結果が活用できるとも限りません。研究結果は、厳密には、対象となった子ども達の縦軸(時間軸の中での発達的変化)と横軸(個人の要因+物理的・人的影響)が交差した限定的な事実を示したものである可能性を考慮に入れたうえで、発達臨床の場で応用を試みたり、次の研究を考えたりしています。

 

研究生活で最もわくわくしたこと、逆に最も落ち込んだこと

子ども達と過ごす時間はとてもわくわくします。分析結果から新たなことが分かったり、学会などで他の研究者との議論から新しい視点が拓けたりすることも楽しいです。一方、発達支援の現場で、私自身がこれまで得てきたものだけでは、目の前にいる子どもに対する効果的な支援について思いつかないとき、残念な気持ちがします。

 

研究生活で出会った印象的な人物やエピソード

学部・大学院での指導教官である大神英裕先生は、学生時代から研究や発達臨床をはじめとして多くのことを教わり、今現在も公私にわたり何でも相談させて頂いていて、今の私のベースとなっています。本学心理学講座の先生方も、学生時代から変わらぬ温かなご指導、ご助力を下さって大変感謝しております。

 

大学院生へのメッセージ

何も始めなければ何も得られません。結果として目の前のことがうまく進んでいるように見えなくても、たくさん考えたくさん動くことで拓かれる道があると思います。主体的に何かを追究し続ける姿勢と他の研究者との交流を通じて自分の課題を客観的に把握することは重要と感じています。

 

大学院生の時何をしていたか

研究に打ち込み、調査で子ども達との時間を楽しんだり、他大学の先生や院生と知り合って色々なことを話したりしました。また、ケーキやパンを焼くのが好きで、たまに何かを作っては院生室で皆と食べたりしていました。

 

学際連携についての思い学

際連携は目的とされるべきものではなく、研究の進展と必要に応じて自然に発生するものだと思います。また、学際的に連携することでより深い研究をしていくためには、前提として、連携し合う研究者それぞれの専門性と独自性が確立されている必要があると思っています。

 

今後の研究・実践活動について

今の研究テーマに沿って、今後も継続して研究・実践していきたいと考えています。

山田 祐樹

研究テーマ設定の背景

私の究極目標は、われわれがこの世界を認識している仕組みを全て知ることでした。まあいきなりそれは厳しいよねということで、比較的まだ良く分かっていないテーマは何かなあと探してみて、ホットだったものが現在の研究テーマです。近年ではいろいろなおもしろ実験が可能になってきているので、いろいろやっています。

 

研究手法

基本的には実験参加者の方にパソコン画面を見てもらってぽちぽちボタン押しをしてもらいます。実験風景としては極めてつまらないように見えますが、それで明らかになることはとてもおもしろいです。われわれが直感的に「人間っていうのはこうだろ」と感じている事柄に明らかに反するような事実もいろいろ分かってきています。最近では質問紙調査や脳活動計測なども組み合わせて、心のソフト/ハードウェアをより総合的に調べています。

 

調査対象や調査地についての解説

基本的には人間の成人(といっても参加者募集の性質上、大学生・大学院生ばっかり)を対象としています。しかし一時期からはチンパンジー、犬、猫、鳥、イルカ、メダカなども対象とした研究に興味があります。いったん人間を遠くから眺めてみるのも大事かなあと思ったのが理由です。調査地は基本的に箱崎キャンパスの実験室ですが、対象によってはどこでもありですし、オンラインでのアンケート等を利用したりもします。調査のためのアプローチが縛られにくいのが心理学の強みと面白みの一つだと思っています。

 

研究についてのこだわり

特にありませんが、むしろこだわりをあえて無くし、できるだけニュートラルでいられることが…私のこだわりかもしれませんね()。あえて挙げるなら、専門家が「知的な意味で」思わず笑ってしまうような面白い研究がしたいです。

 

研究生活で最もわくわくしたこと、逆に最も落ち込んだこと

論文の査読結果のメールが届いた時はいつもわくわくします(大体そのあと落ち込むことになります)。あと学会や研究活動上、未体験のことに遭遇する機会が非常に多いので、そのたびに緊張し、焦り、不安になり、それを後で思い返すととても面白かったという感想につながります。強く落ち込むことは、自分が書いた論文が世に出た途端に苦言を呈されることです。これが出版後査読の利点でもあるのですが,心には来ますね。

大学院生へのメッセージ

孫子に「戦いは正をもって合し、奇をもって勝す」とあり、昔のカードダスでもアムロが「力には技、技には魔法、魔法には力だ」と言っていました。つまり、攻略対象に応じて正攻法と奇策を適切に使い分けることが大事です。そのためには両方の戦い方を修得しておく必要があります。たとえ他の院生から蔑まれようと馬鹿にされようと、自分の専門では決して主流ではない研究手法にも慣れ親しんでおくと、後々大きな利益を生むはずです。

 

大学院生の時何をしていたか

これは極めて危険な質問です。とりあえずまずは熱心に研究活動をしていました(ほんとです)。あとは、ほんの情報収集の意味でインターネットや、絵の多いタイプの書物を閲覧したり、動画鑑賞などを行ったりしていました。心理学実践の一環として四人制のテーブルゲームも頻繁に行いました。そして登山、自転車、フットサル、音楽制作、歌唱、キャンプ、犬猫触り、廃墟巡り、深夜徘徊等も適度に織り交ぜながら麺類を食べたりしていたら気がつくと8年も箱崎にいました。いろいろやっといて(多分)損はないものと信じます。

 

学際連携についての思い

上述したように未体験の事柄に多く出逢えるので非常に刺激的で面白いです。また同時に自分の研究を別の視点で眺めることにもつながります。ある意味での「文化」の全く異なる人々と共同作業を行うために困難も生じるかとは思いますが、自分の枠を広げ、柔らかくするためにはとても役に立っていると思っています。「麻雀は額縁を外す戦い」らしいですが、研究もそうだと思います。

 

今後の研究・実践活動について

正直言って自分が今後何をするのか自分でも予想がつかないのですが、感情研究は「嫌悪感」と「幸福感」にも広げていこうと考えています。これらは非常に日常的な感情なのですがまだその内部基盤がよく分かっていません。麻雀などにおける「ツキ」というのが何かも知りたいですね。私は心理現象だと思っています。とにかくしばらくは手当たり次第にいろいろやっていこうと思います。

 

おすすめの文献

○「脳のなかの幽霊」V.S.ラマチャンドラン、サンドラ・ブレイクスリー

○「Mind Hacks」Tom Stafford, Matt Webb

○「臨床心理士聖徳太一」香川まさひと