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大学院人間環境学研究院

Faculty information

教員情報
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佐藤 利昭准教授Toshiaki Sato

専攻 空間システム専攻
部門 都市・建築学
コース 修士: 建築構造学
博士: 空間システム
講座 構造防災系講座
九州大学研究者
データベース
https://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K006332/index.html

研究内容

研究テーマ設定の背景

地震などの自然災害が起きたとき、「木造の建物だから安心できる」と思ってもらえる社会となるように、主に耐震性能に注目した木造(木質構造)の研究をしています。「木造=地震で壊れる」というイメージが強いと思いますが、住宅に取り付けて地震のエネルギーを効率的に吸収する制振装置の開発や、お寺などの伝統的な建物のヘルスモニタリング(健康診断)を行い、耐震補強の有効性を確認するなど、実社会に成果を還元できる研究に取り組んでいます。また、木材の性質を科学的に明らかにする取り組みも並行して進めています。

 

研究手法

工学の基本は、「現象の確認→モデル化→将来の予測」にあると考えています。実験などを通して、モノが壊れる原因を深く考えることからはじめ、その原因を数学的に表現する方法を検討し、その結果を基に未知の外乱(将来の地震)などに対して、安全に暮らせることを確認していくことが、基本的な進め方となります。

 

調査対象や調査地についての解説

「現象の確認」が研究の起点になるため、実験などで人工的に住宅や構成部材を壊す他、実際の被災地域も研究の中では調査対象となります。被災された方々に最大限に配慮しながら、将来の被害を軽減するために自分の目で被害を見て回り、その要因を深く考えることで研究を進めています。

 

分析のためのソフトウェアやツール

「将来の予測」のためには、数値解析が必要になります。市販のソフトが多い昨今ですが、自分の研究に対する責任として、研究で使う解析ツールはFortran言語などにより自作するように心がけています。一方で、構造設計に類する取り組みをする際には、市販の構造計算ソフトの使い勝手が良いので、それらに頼っています。

 

研究についてのこだわり

自分の成果に責任を持つことが、一番のこだわりです。そのために、まず間違いがないように努力をして、また間違いがあっても、誠実に対応するように心がけています。

 

研究生活で最もわくわくしたこと、逆に最も落ち込んだこと

研究生活には波があり、どんな問題でも分かるときもあれば、自分の無知に嫌気がさすこともあります。研究の楽しみ方は十人十色だと思いますが、現象解明に及ばない失敗の連続の中で、思考を進めているときが、最もわくわくしているのかもしれません。

 

研究生活で出会った印象的な人物やエピソード

人それぞれ個性があるので1人を挙げることは難しいですが、様々な意見を聞きながらも、自身の研究は自身の力で進める姿勢を見習っています。風変わりな人も知人には多いので、面白いエピソードは山ほどありますが、ここで紹介しても面白みに欠けるので、聞きたい人は研究室にきてください。

 

大学院生へのメッセージ

大学院に何を求めるのかを考える時期かもしれません。自身の経験をいうと、ただ研究が好きでこの道を目指しました。大手企業などに比べれば、リスクのある道に見られるので、多くの反対もありましたが、止めようとは思いませんでした。自分の将来を十分に考え、さらに決意を固めた上で、学ぶべきことを学ぶのが一番だと思います。

 

大学院生の時何をしていたか

自分の興味に正直な方なので、研究が面白いときは研究をしていました。もちろん他の興味があること(映画、読書、車など)にも時間を割いていましたが、結局、研究室のメンバーと一緒にいる時間が、何より長かった気がします。博士課程のときは、設計事務所にも勤務しながらの研究生活だったので、自分の肉体的な限界を知る良い機会となりました。

 

学際連携についての思い

専門である「耐震工学」は、その名の通り、工学であるので実社会との対応が求められます。社会と繋がりがある以上、分野に関わらず多くの知識を身につけることが、研究の幅を広げる材料になると考えています。連携が目的となることなく、必要条件となり活動を進められることを希望して、前向きに取り組みたいと思っています。

 

今後の研究・実践活動について

さほど豊かなではないですが、これまでの経験上、自然に身を任せながら、随所で努力を惜しまないことが、人生を上手に楽しむ方法のように感じています。研究も同様で、自身の興味に正直でありながら、誰かから相談があれば耳を傾け、また誰かから依頼があれば、社会活動にも参加するというように、何かに固執することなく進めたいと思います。

 

おすすめの文献

少しかたそうな本ですが、
○日本建築構造技術者協会編:JSCA版木造建築構造の設計、オーム社
○Timoshenko,S.P.andGoodier,J.N.:TheoryofElasticity,ThirdEdition,McGraw-HillBookCompany
○日本木材学会編:木質の物理、文永堂出版

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